「大丈夫だゾウの教え」についての書評（２）です。
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【書評：大丈夫だゾウの教え−こころが軽くなる53のメッセージ】
＜評者：小股千佐＞
（宝彩有菜・文 宮尾怜衣・絵／廣済堂出版 税込1,155円）
『書人宝庫』に掲載されたものです。 2005/8/27
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●ちょっと見方を変えれば、アラ不思議
「よくあるこころの健康系の本かあ」、とあまり期待せずに手にとった。
その手の本はたくさん出ていて、なんだかもうお腹いっぱいなのだ。
それに、「あなたは、かけがえのない、世界にひとりだけのあなたなのだから」なんて言われても、「ハイハイ、そうですよ。もちろんそうなんですが、でも現実問題、今ここに悩みは存在してるんだから」ってな具合に、なんだかあまり薬にならないことが多い。
この本の著者は、元ライターズ・ネットワーク会員の宝彩有菜さん。絵を、会員の宮尾怜衣さんが描いている。
登場人物は、"ガネーシャ神"から17代目の神様だという「大丈夫だゾウ」と、「大丈夫だゾウ」の筆頭弟子でツチブタの進化形だという「ひねぶー」。このキャラクターたちが、ほんわかと実にかわいらしくて、なんだか深刻味がなくていい。「大丈夫だゾウ」なんかは、このまんま文房具なんかのキャラクターにしたいぐらい、キュートだ。
「ひねぶー」に、最近「まぶー」という好きな人ができたらしい、というコメントも、本書にはどこにもからんでこないのだけれど、くすっとかわいい。遊びゴコロがある。
本書を手にとってぱらっと適当に開くと、「失恋」「自信がない」「いやなやつ」「失業」など、53あるいずれかのテーマについて、この大丈夫だゾウが左ページにコメントをし、右ページで宮尾さんの描くとぼけた味の「ひねぶー」が、コミカルに動き回っている。
その「大丈夫だゾウ」のコメントは、わずか３行から多くても14行ぐらい。なかには、「ええっ、そんなはぐらかしかたってアリ？」と思うコメントもあるけれど、軽快に問題をはぐらかすようでいて、なかなか考えさせられるような言葉が書かれている。
たとえば、「悪い子」の項。
「悪い子でも、大丈夫。
悪い子でも、大丈夫だぞー。
良い子をやりすぎると、自滅するが、
悪い子なら大丈夫だ。
多少の摩擦はあっても、自滅することはないぞー。」
というふうに。
この本の趣旨は、見方を変えることで物事の捉え方を変えてみよう、ラクになっちゃおう、というもの。
本当に深刻に悩んでいる人やうつ病患者には効き目はなさそうだけれど、「ちょっぴりうつ」さんや、「なんだかもんもん」さんにはなかなか効き目がありそうだ。
それに、大丈夫だゾウに、「大丈夫、大丈夫。大丈夫だぞー。」と言われ続けていると、本当に、「うんうん、大丈夫だぞー」という気分にもなってくる。
そのコメントを読んでいると、問題を深刻にとらえて、悩んでいるのがアホらしいようにさえ思えてくる。
そういう意味で、本書は冒頭に挙げたような深刻ぶった類書よりもずっとずっと軽やかだ。そして、実用的といえる。
「あなたは、かけがえのない、世界にひとりだけのあなたなのだから」なんてのを読むよりも、ずっと心が軽くなるから。
そして、「そうだよね〜」とクスッと笑うことができるから。
あなたも一冊手元に置いておいて、煮詰まったときには該当する項目を開き、クスッと笑うといいかもしれない。
▼評者：小股千佐（おまた ちさ）
フリーライター。情報誌を中心に多ジャンルで雑多に執筆中。
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▽文：宝彩有菜（ほうさい ありな）
瞑想家・エッセイスト。自身の瞑想体験から生まれた深い人間心理の洞察と、それに基づいて書かれた作品には定評がある。著書に、『５分間で新しい自分になれる本』『あなたがいてくれて、ありがとう』（ともに廣済堂出版）など多数。本著はメールマガジンにて連載されていた「大丈夫だゾウ」に、新たに30編あまりを追加したもの。
▽絵：宮尾怜衣（みやお れい）
イラストレーター。多摩美術大学卒業後、フリーに。キャラクターデザイナー、イラストレーターとして活躍。ブルボン「きどりっこ」、ＮＨＫ「どこでもクッキング！」など数多くのキャラクターデザインを手がける。イラストレーターとしては３つの名前を持ち、カレンダー、絵本、児童誌、用品などの企画・製作にも携わっている。ライターズ・ネットワーク会員。http://www6.big.or.jp/~reichan/
Writers'Networkメールマガジン 2005/8/27 に掲載されたものです。
★ 書人宝庫 エキストラ版 第33号 書評特集 ★
http://www.writers-net.com/
以上
宝彩有菜
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